【過去の金融危機から学ぶ】日本国債の小幅暴落?(金利上昇と超円安懸念)
こんにちは、K2 Investment 投資アドバイザーの眞原です。
今回の資産運用相談ホームページブログでは、先週1/22日(木)に債券市場で大きな動きがあった日本国債(金利上昇)についてです。
一言に「金利が上昇、金利が下落」というニュースを見聞きしますが、そもそも「金利」は短期金利と長期金利というのがあります。どちらを指しているかで話は変わってくるのですが・・・多くは、日本の指標金利である新発10年国債利回り(長期金利)を指しています。
長期金利は、その国の「経済の体内時計」とも表現されるもので、1年以上の資金貸出や住宅ローン金利の目安になっています。この金利は「実体経済の成長率予測」「物価上昇率の予測」「政府債務への警戒上乗せ部分(リスクプレミアム)」の要素によって水準が決まってきます。
それではまず、個人投資家に馴染みが薄い、日本国債いわゆる新発10年国債(長期金利)の推移を確認してみましょう。
<新発10年国債利回り 直近20営業日チャート>
チャートのように先週22日に急激に跳ね上がっているのが確認できます。その晩にはECB(欧州中央銀行)の金融政策の発表があったため、大口投資家や証券会社がポジション調整で売りに走った為、予想外の金利上昇(債券価格下落)ということになったようです。
その前日、21日には日銀の金融政策決定会合がありましたが、黒田総裁の歯切れが悪い会見内容だったものの、今までどおり「金融緩和=国債の買入れ」を継続していくと発表しています。
日銀の金融緩和策は、年間80兆円(月間10〜12兆円規模)で国債などを買い入れる政策になっていますが、例えるならばこれは、『国債マーケットという、池に「日銀というクジラ級の巨大な魚」が入ってきたが為に池の水が溢れだし、それまで仲良くしていたメガバンク、地銀などの銀行(国債ディーラー)が水不足に陥り水の取り合いをし、アップアップしているという状況』を作り出しています。
政府が発行する長期国債は毎月およそ10兆円程度なので、これをほとんど日銀が買っている状況になります。ということは、国債マーケットでは債券不足になっているので、市場が歪んでいる環境です(健全ではない)。本来はマーケットによって決まる体内時計(金利)が、日銀という人為的な政策によってある意味操作されているので、通常とは異なる動きになりやすくなっているということです。
中央銀行という巨大なクジラが国債を買う(量的緩和)ことで、メガバンクや証券会社のマーケットポジション次第で、今回のように金利が急騰(=国債価格下落)が容易に起こるというのが証明された事例でした。
さて、これを「国債の暴落」と表現しないのはなぜでしょうか?日本株であればしょっちゅう「日本株暴落!」の文字が踊るにも関わらず・・・。今回の事例は巷で言われる「日本国債暴落論」に近い事象が起こったといっても良いと個人的には思います。日銀が(出口戦略を示さないまま)こういう政策を続ける以上、今後もこういう事態は度々起こるのではないか?とも想定できます。
思い返すと2012年のギリシャ危機の時はギリシャ国債の金利が30%程度まで上昇しましたが(国債価格下落)、誰もそんな国債を買いたがらなかったという過去の金融危機の歴史があります。日本の場合、対外純資産や国債の引受具合を考えると、ギリシャのように過度な金利上昇は想定できませんが・・・仮に上昇しても、今の状況であれば日銀が買ってしまえば良いだけです。
ただ、日銀が日本の借金(国債)を引き受けているとマーケットから見なされれば、為替(JPY)に大きな売りが浴びせられる可能性が高まります(円暴落≒ハイパーインフレ)。国債と比べると為替の暴落はいくらでも容易に起きている歴史があります。
「起こるか起きないかは神のみぞ知る」なので、そんなことも想定しつつ、個人投資家は資産を守るべく、為替(通貨)分散、金融機関の分散(スイスプライベートバンクの活用)、物価連動債への投資など「Xデー」に備える事はできると思います。