証券マンの担当顧客争奪戦
証券会社で働く上で、数字がすべてです。基本的には管理職、支店長も含めて、全員が数字(収益)を背負い、全員が毎日個人の数字を全国で確認され、自分が今月今どのくらいできていてどのくらいできていないのか、を一目でわかってしまいます。
そんな証券会社の社内では、数字をあげるために良く言えば切磋琢磨、悪いく言えば獲物(顧客)の取り合いをしています。獲物とは顧客のこと。特に預かり残高がたくさんある顧客であったり、ポテンシャルのある(企業オーナーや開業医、地主など将来キャッシュを入れてくれそうな)顧客です。
証券会社の社員には大きく分けて2種類あります。転勤族と非転勤族。
転勤族はいつ異動があるかわかりませんが、平均で3年です。その3年という短い期間の中で成績を残さなければいけません。残せれば次の異動先で良い引き継ぎ(担当顧客の割り当て)ができ、残せなければ次の異動が良いということはないでしょう。そうして証券マンの出世が決まっていきます。
彼らにとって、顧客を新規開拓することはとても時間と手間がかかることなので好みません。逆に出来る限り今ある資金(顧客がすでに投資をしている資金)をいかに回転売買(売って、次に何かを買わせること)がとても数字をあげる上で重要になります。その結果、新しく買った商品が上昇して利益が出たり、そこから紹介などがあったらラッキーという営業スタイルです。そのためできる限り良い顧客を自分の顧客にしようとあの手この手を使います。上司に取り入ったり、後輩から無理やり自分の担当に変えたり、知らないふりをして突然その顧客に会いに行ったりなどです(笑)。
次に非転勤族。彼ら彼女らはずっとその営業店にいるため、自分の顧客は永遠に自分のものです。よっぽどのクレームがない限りは、管理職から担当変えをするわけにもいきません(その人が最もその顧客との付き合いが長いわけですから)。結果、退職するまでひたすら牌(顧客のこと)を積み重ねていけます。そうなると皆さん想像がつくように、今の日本の政治と一緒で、既得権益は手放したくなくなるのです。牌をたくさん持っていれば持っているほど何でも有利です。将棋でもチェスでも同じです。だから永遠に牌を打き抱えて離さなくなります。
こうして投資家(顧客)サイドから見れば、自分たちのために証券会社が運営してくれてると思っている裏で、社内での戦争が起こっているわけです。目的はひたすら「数字(収益)を出すため」です。それ以外の会話などほとんどありません。投資で利益を上げるため?そんな会話はしているヒマなどほとんどありません。
だからこうして今「投資アドバイザー」としてひたすらどうやったらちゃんとした利益を出せるのか?どうやったらリスクを抑えた安定した投資ができるのか?を話していると、とても新鮮で気持ちのいいものです。やっとまともな資産運用の話をできるようになった気がします(笑)。