円建て投資という錯覚
日本国内で運用をしようと思うと、まるで外貨に投資していなく、円100%の資産を持っているという錯覚に襲われます(私ではなく問合せをいただける方やクライアントが)。私は違いますが、一般的に日本人の投資家には外貨というのは「リスク」だという認識があるようなので、円建てで投資ということで安心感を持っているようなのです。
しかしここで大きな誤解があることをハッキリ申し上げておきます。というのも皆さんが毎月分配型ファンドや新興国株式ファンドで投資しているのはすべて外貨100%で運用しているのです。いいですか?ブラジルレアル建てなど、外貨建て投信でない、通常の円で基準価格が毎日出ている投資信託でも、外貨100%で運用しています。
そう、問題は基準価格がすべて円で表記されていることなんです。日本人は皆国内の銀行で、日本円で預貯金、定期預金をしています。つまりファンドへ投資をしようと思うと、皆円から投資をすることになります。その環境下で、証券会社や銀行のセールスマンがわざわざ外貨建て(これが本来純粋)にしてファンドへ投資しようと思うと、投資家は「為替リスク」が嫌だと言って投資してくれません。投資してくれなければ金融機関は手数料が入りませんから、「だったら円表記されるファンドを作ってしまえ!」ということで安易にすべて円表記になったのです。
最近になってブラジルレアル建て投信というのに火がついて、「外貨建て」というのが人気になりましたが、それまでは外貨建ての投信の資産残高というのはとても少なかったものです。
さてすべて日本円で表記される投信の基準単価。よく考えてください。皆さん日本に住んでいるわけですから、日本円で投資できるものといえば、あなたの身の回りにあるものだけなのです。海外では誰も日本円など使いませんよね?だから、あなたの周りを見渡せばそれが唯一の円での投資先です。つまり・・・
・日本株
・日本国債
・円建て社債
・不動産(J-REITなど)
これだけです。あなたの投資しているファンドは上記のものに投資をしていますか?おそらく違うと思います。日本株もJ-REITも下がり調子で、もし持っていたとしたら塩漬けです。日本国債と円建て社債はそもそも全然金利が付きません。誰がファンドで高い信託報酬と買付手数料を払って投資をするでしょう?
つまり今人気の高配当の毎月分配型ファンドや外国株式ファンドはすべて外貨建てで運用しているのです。それを毎日の為替で円表記しているだけ。だからあなたも外貨100%投資をしているのです。そう、「為替リスク」を取ってるんですよ(笑)。
そして厄介なのは、この円表記されている日本国内で販売されているファンド。これは解約する時には、強制的に円に換金しなければいけないことを表しています。例えばあなたがブラジル株ファンドへ投資してたとする。
「ブラジル株は上昇しているので利益確定をしたいが、ブラジルレアル通貨は安いので、ブラジル株だけを利益確定したい」
と思ったとしてもそれはできないのです。上記のようなことは当然起こります。というよりもブラジルレアル安というのはブラジル経済にとってはプラス材料なのでおそらくその時はブラジル株は上昇しているでしょう。しかし日本人投資家は両方の利益を同時に取ることはできないのです。
だから通常世界の投資家は外貨建て(現地通貨建て)で投資をします。例えば・・・
・ブラジルレアル建てでブラジル株へ投資
・米ドル建てでアメリカのハイイールド債へ投資
・インドルピー建てでインド株投資
・豪ドル建てで豪ドル債投資
です。
金融リテラシーの低い日本人投資家(むしろ販売する金融機関が低いせいかもしれない)は、ちゃんとした運用すらすることができず、なんとなく運用した気にさせられて、利益が出るか出ないかなどあまり重要ではなく、手数料を稼げるか稼げないか、が重要な日本の証券会社、銀行によっていいように利用されるのです。
皆さん、自分の身は自分で守りましょうね。