増資ラッシュ、株価に重荷
先日の三菱UFJ銀行の1兆円増資の発表含め、メガバンク3行だけで2兆4000億円、野村ホールディングスで7100億円の増資、今年だけで5兆円規模の公募増資が行われたそうです。
言うまでもないかもしれませんが、増資は今まであった株の価値を希薄化させるので、株価は下がります。増資が発表される前からの株主にとってはたまったものではありません。ではなぜ株価を下げてまで増資をするのでしょうか?表向きはともかく、本質ではポジティブな要因とネガティブな要因があります。
ポジティブ要因:
将来の収益のために、今のうちに資本増強をして、そのお金を使ってM&Aをしたり、設備投資をしたり、人を雇ったりします。
ネガティブ要因:
アメリカの銀行のように、将来財務状況が悪くなる可能性が高いので、今のうちに資金調達しておこう、ということです。
今回の場合、野村ホールディングスが前者、メガバンクが後者でしょう。しかしこれを見分けるのは難しいと思います。その会社の内状を良く知らなければいけません。しかしながら、いずれにせよ増資は株価にとってマイナス要因です。
ちなみにこのREITの増資もネガティブ要因でしょう。今や銀行はどこもお金を貸してくれません。一切のリスクを取らないのです。今年初めて倒産したREITも出てきましたが、それを未然に防ぐための資金調達でしょう。
このせいなのか日本株は今年9月以降も完全に出遅れています(左上チャート参照)。増資以外に「政権不振」、「商い低迷」、「長期安定株主の減少」など要因は全てネガティブ。この後、投資先を日本株にしておく必要はあるのでしょうか?どう考えても中国など新興国、せめて米国、EU諸国の株でしょう。
そもそも増資などこの不景気の中、ポジティブ要因だなどと思っている投資家は少ないはずです。ちょっと株式投資をかじればわかることだからです。それでも増資をすれば市場から資金調達できてしまうのはなぜでしょう?証券会社の営業マンが営業するからです。たしかに増資の発表後株価は下がって、さらにディスカウントもあり、見た目はその時の市場より安く買えるように見えるかもしれません。しかし、現実はそれ以上の鞘を証券会社は手数料として抜き、将来その株が上がるかどうかとは関係なく、投資家に営業をしているのです。それはそれで市場の役割としては重要だとは思いますが、投資家はそんな慈善事業に参加しなくていいのです。大事な金融資産なので、ちゃんと断るところは断りましょう。
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