公募増資企業、株価に明暗

公募増資(PO)をした企業のその後の株価に明暗がわかれた。というよりほとんどが暗の方だったよう。

まず2009年に公募増資額が4兆9000億円でバブル後最高。景気がいいから?もちろんその逆、2008年にできた借金と株安、さらに銀行の貸し渋りで、新しい資金が欲しい上場企業が多かっただけです。

さてこのうち25社が東証1部上場企業。総額1兆4000億円の公募増資をした。

この25社のその後の株価を検証してみよう。

まず値上がりをしたのはたったの3社。

日立:+20%
東芝:+8%
日本郵船:+2%

値下がりしたが下落率が日経平均より小さかったのが1社(同時期日本株全体も下がっていたので)。

ANA:-7%

そして残り21社すべてが下落銘柄である。中でも特に下落幅が大きかったのが以下の銘柄。

野村不動産HD:-30%
昭和電工:-21%
トクヤマ:-45%
三井化学:-24%
ケネディクス:-62%
曙ブレーキ工業:-35%
東京建物:-25%
ダイワボウHD:-40%

なぜこれだけ上がったとこと下がったところに差が開くのか?結局は、増資をして新しい資金を何のために使ったのか?で市場の評価(株価)が決まっているのである。

ではいい例から見てみよう。

日立は主に鉄道、電力といったインフラ関連に投資。

東芝は半導体のほか原子力事業に投資。

日本郵船も船舶増強をして、新興国の資源輸入に備えている。

これら3社の傾向を見てみると、新興国や環境関連インフラに投資をしているところが、今後伸びると市場で評価されているのがわかる。

次に日経平均より下落幅が低かったANAは、燃費の良い機体を購入するという用途がハッキリしていたこと。

大幅に下落した企業は・・・

不動産の野村不動産HD、東京建物、ケネディクスは、国内不動産の低迷で、用地取得や開発をしても、それが将来どのくらいの収益になるのか見通しがたたない、という評価。

化学の三井化学、トクヤマ、昭和電工も、素材の設備投資にあてるそうだが、投資完了して収益が出るのが先になりすぎる。

曙ブレーキ工業も自動車がすでに成熟している国や北米の投資比率が高い半面、新興国へ投資をしていない。

そして借金返済にあてただけのダイワボウHDも当然大きく下げている。

公募増資の仕組みをよくわかっていない投資家が、単に株価のディスカウント手数料が無料という2点だけに惹かれて、証券会社から買っている人が多いのが現場だと思う。営業マンもそれ以上の説明をしないのももちろん問題だとも思うが、投資は自己責任。それで投資を決めてしまうのは投資家も悪い。

「こんな内容聞いていたら投資しなかった!」とおっしゃるかもしれないが、実はこれらの内容はすべて公募を募る段階で、目論見書に全部記載している。そう、ハッキリ「借金返済のため使用」と書かれているのである。よく読んで説明しない証券マンも悪いが、資金使途を理解していないのに(あなたの大事なお金なのに)投資をする投資家も悪い。

たしかに時期的に、昨年(2009年)はどの企業も資金繰りに困っていたので、公募増資をして株価が上がるなんてとても思えなかったのですが、しかし2004年から野村證券で4年半(2008年9月まで)働いていた私の経験から見ても、公募増資は本当に上がらない。よっぽど株式相場の地合が良くない限り上がりません。今回は東証1部だけのご説明をしましたが、これが東証2部以下になると、全国的には認識されていない企業も多いので、本当に上昇するところのほうが珍しいです。

それでも公募はすべてさばかなければいけないのが証券マン(笑)。これを読んでる皆さんは、もし公募増資に手を出すなら、ちゃんと証券マンとその銘柄について話し合った上で決めてくださいね。


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