ノルウェー輸出金融公社 早期償還条項付 他社株転換条項付 円建債券(JT、三井住友FG)
債券にもいろんな種類の債券があります。通常は日本国債や豪ドル債のような、為替はともあれ、利付債券というのが主流で、債券を持てば満期には元本が必ず返ってきて、その間固定の金利が付いてくる、というものです。
今回のはこの利付債に、「早期償還条項」と「他社株転換条項」というのがついています。それぞれご説明します。
まず「早期償還条項」。少し理解しづらいですが、JTと三井住友FGの株価が一度でもノックイン価格(65%)を下回り、その後、同銘柄が当初価格(100%)を超える時が毎四半期の早期償還判定日にあった場合、次の利払い日に100%の元本で返ってきます(元本上乗せ部分はなし)。とりあえずこういうものと理解してください。
早期償還でなく、満期時に元本が100%返ってくるケースとしては、以下の図1にあるように、ノックイン価格になった後、満期時に元本を超えている場合。そして、図2のように、一度もノックイン価格を下回らなかった場合(この場合、満期時に株価が100%を超えているかどうかは基準ではない)。
次に「他社株転換条項」。この債券は「JT」と「三井住友FG」の株価に転換されるかもしれない、ということです。そのため早期償還や転換の条件で、JTと三井住友の株価が基準となります。
そして期間中、一度でもノックイン価格になり、その後早期償還判定日、満期日共に100%以上に戻らなかった場合は、そのノックインした方の株式が手元に届いてしまいます。
こういった複雑で、個人投資家が理解しづらい商品は、まずこう考えます。この債券は10%の金利はつくけれど、リスクは株に依存している。つまり、このJTと三井住友FGの株式のリスクを考える必要がある。JTと三井住友FGの株価を見た場合、過去、35%下落(65%の株価)というのは十分にあり得た。今後も「そうなるかも」と考えた方が妥当だろう。
次に、65%以下になった後、元の100%に戻れるかどうか?
ここで問題になるのが、よくあるこの誤解。「100%のものが一度65%になり、その後100%になるのに、35%上がるだけでいいと思いますか?」
もちろん答えは「NO」である。答えは「53.8%上がらなければならない」です(式:100÷65)。53.8%という成績をあなたは株式で上げられますか?しかも一度の売買もなく、ただ「JT株」と「三井住友FG株」を保有しているだけで。私はほぼ不可能、というより、神のみぞ知るというところでしょう。
10%の固定金利はたしかに魅力です。しかし、株のリスクをあなたが背負うのですから、逆に言うとそのくらいの金利、もらって当然だと思います。
結論、私なら投資しません。上にも書いたように、JTと三井住友の株式に自分の運命を委ねなければいけないからです。株式投資のように、途中で「損切り」もしくは「利益確定」をして逃げられるわけでもありません。満期は1年後ですが、1年の間の日本株式のボラティリティ(変動率)はすごいものです。もしJTと三井住友FGが上がると思うのであれば、直接この銘柄を買って、年間10%以上の利益をあげます(空売りもできますからね。。)。
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