JAL(日本航空)IPO(再上場)
JAL(日本航空)株の再上場(IPO)に関するご相談が多いのでこちらにまとめておきます。ただしこれは初値予想や上昇するかどうかの予想ではなく、再上場と証券会社の役割についてご説明したいと思います。
まずJALは3年前に破綻をし、それに伴い上場廃止。当然資金がなくて破綻するため公的資金注入。産業再生機構出身者が集まったJAL再生タスクフォースという機関が作られ、京セラの稲盛和夫をJALのトップにし、リストラ、コストカットの上、利益を生み出せる会社となって返ってきた。そして今回9/19に再上場というシナリオである。
さてここで投資家を探すために証券会社が出てきます。今回は国内のほとんどの証券会社が総出であらゆる日本人投資家を探してきて、何が何でもこの175,000,000株の3/4を日本人投資家に、1/4を海外投資家に買ってもらわないといけないということです。国家事業ですから、「売れませんでした」なんていう言い訳はできないのです。これは「絶対」売らないといけないのです(ここでノルマかどうかの会話はありません)。
こういった売出(IPO)に関しては投資家は株の手数料を払うことがありません。例えば公募価格が3500円であれば、3500円×株数分の資金を用意するだけでいいです。では証券会社はどこで収益をあげているのでしょうか?答えは3500円の中に証券会社のコミッション(手数料)がすでに入っているのです。今回がいくらかはわかりませんが、例えば53円(約1.5%)が証券会社の取り分だとすれば、3447円が売り手(今回だと国)に入ってくるのです。
当然、投資信託の手数料(3%など)よりは安いので投資信託を販売している方がよっぽど儲けられるのですが、たまにこういった見え方の違う商品を顧客に紹介することは良いキャッチにもなっていいものです。しかも今回は全証券会社が一斉に全社的に案内するわけですから、こっちで買うかむこうで買うかの違いになるわけです。だったらこっちで買ってもらおうということですね。ついでにこういうものには投資家はキャッシュ(現預金)を持ってきてくれるものです(笑)。
ではこの株が上昇するかどうかですが、主に以下の3つの要因があります。
1)公募価格が割安に設定されるかどうか?
2)今後この収益性が続くかどうか?
3)3年以上保有すると航空券が割引などの特典をいかに定着させるか?
まず1)は、高く設定すれば国が多くの売却益を得られることになるが、その反面投資家が儲からなくなる。株の売買(売り手:国、買い手:個人投資家)というのは綱引きゲームなのでどちらかが儲かればどちらかが儲からない。国やJAL再生タスクフォースがどこに重きを置くか、ということですね。
2)について、すでに80歳の稲盛和夫さんが来年はじめに引退することはすでに決まっている。今の体制とモチベーションを再上場後どこまで続けられるか?というのも今後の株価を決める大きな材料となります。
最後に3)。新たな株主優待として、3年以上保有した株主に対しては、大幅な自社航空券の割引があるといいます。どのくらいの割引かはわからないが、こういった長期保有の個人株主を根付かせることは、大きな株価底上げ対策となるのも事実。さすが稲盛さん(彼が決めたのかどうかは知らないが)というところでしょうか。
ただ今回の再上場の規模は6800億円と世界で今年2番目(1位は現在株価が半分になっているfacebook)。日本でいうと過去4番目の規模である。大型株でいうと、NTT、JTなどあまり良いイメージがないのが事実。株価の急上昇は当然期待できないが、どこか多少でも利益が出た時点で売却をするというのがベターでしょう(それでも最初に上昇するかどうかはわかりません)。